
【はじめに】長リーチ協働ロボット「UR8 Long」の概要
協働ロボットの世界シェアトップを誇るユニバーサルロボット(Universal Robots, UR)が、2025年9月15日に新モデル「UR8 Long」を発表しました。
この新機種は最大リーチ1750mm、可搬質量10kgという仕様を持ち、従来のURシリーズにはなかった「長リーチ×軽量設計」を実現しました。特に多点計測や外観検査といった品質保証工程での自動化を強力に後押しするものとして注目されています。
🟦 この記事でわかること
- UR8 Long の基本仕様(リーチ1750mm/可搬10kg)
- 長リーチ設計が検査工程にもたらすメリット
- 新機能「MotionPlus」による精度・操作性の向上
- 検査・品質保証工程での活用シナリオ
- URシリーズの進化と今後の検査自動化トレンド
UR8 Longの特徴
- リーチ:1750mm(UR20と同等)
- 可搬質量:10kg
- 設計:スリム・軽量ボディ
- 適用分野:検査・品質保証(QA/QC)に特化
これまでUR5/UR5eは可搬質量5kg・リーチ850mm、その次のUR10は可搬質量10kg・リーチ1300mmでした。
検査工程で使う場合、いずれもリーチが不足する場面が多く、奥まった測定点や大型部品のカバーには限界がありました。
UR8 Longはこの課題を解消し、長リーチと軽量設計を両立させた「検査特化型モデル」として位置づけられます。
限られたスペースの検査セルでも設置が容易で、深いキャビティや部品の隅まで安定してアクセスできる点が大きな強みです。
検査工程でのメリット
これまでUR5/UR5e(リーチ850mm)やUR10(リーチ1300mm)といったモデルは、多くの製造現場で活用されてきましたが、検査工程においては「リーチ不足」が課題となるケースが少なくありませんでした。
例えば、大型ワークの複数箇所を一度に測定したい場面や、深いキャビティの奥にセンサを届かせたい場面では、どうしてもワークを治具で動かす必要があり、工程の複雑化や時間ロスを招いていました。
UR8 Longは、1750mmという長リーチを備えることで、これまで届かなかった領域に直接アクセスできるようになり、検査工程を大きく変革します。
- 大型部品でも 複数の測定ポイントを一度にカバー できるため、検査効率が大幅に向上
- ワークを動かすことなくロボット側がリーチできるため、治具やライン構成を簡略化 可能
- ビジョンシステムや非接触センサとの組み合わせにより、リピート性の高い精密測定 を実現
結果として、これまで人手や複雑な治具に依存していた検査工程を、よりシンプルかつ自動化された形に移行できるのがUR8 Longの大きなメリットです。

新ソフトウェア機能「MotionPlus」
これまでのURシリーズでは、検査工程に必要な精度をある程度は確保できていたものの、長リーチ動作では軌道の揺れや位置決めの誤差が生じやすいという課題がありました。特にビジョンシステムや非接触センサと組み合わせる場合、わずかなブレが測定結果に直結してしまうため、安定性への懸念が残っていました。
UR8 Longに搭載された新機能 「MotionPlus」 は、こうした課題に対応する最新のモーションコントロール技術です。
- 動作軌道をより 滑らかに補正 し、長リーチでも安定した動作を実現
- 高い 繰り返し精度 により、測定点へのアクセスを正確に再現
- 軌道のばらつきを抑えて、測定の信頼性を向上
さらに、従来から搭載されていた フリードライブ機能(手づたえ教示) もアップグレードされ、より軽い力でロボットを動かせるようになりました。これにより、
- オペレーターが測定位置を直感的に指定しやすくなる
- 微妙な角度や奥行きの調整もスムーズに行える
- 教示作業の効率化と作業負担の軽減につながる
つまりMotionPlusと改良されたフリードライブ機能の組み合わせは、検査工程における「長リーチでの安定性」と「現場での使いやすさ」の両方を大きく前進させるものと言えます。
まとめ
UR8 Longは、ユニバーサルロボットの協働ロボットラインナップにおいて、従来のUR5eやUR10では難しかった「長リーチでの安定した検査自動化」を実現するモデルです。
検査工程をラインの外に切り離すのではなく、生産フローに組み込んで自動化できる という点で、これまでにない付加価値を持っています。
日本の製造業においても、この特性は強く求められています。たとえば、
- 自動車部品工場では、大型パネルやエンジン部品の複数箇所の寸法測定を1台でカバー可能
- 食品・包装ラインでは、奥行きのあるパッケージやカートンの外観検査に対応できる
- 電機・精密機器分野では、深い筐体内部の検査を省人化し、安定した品質保証につなげられる
こうした現場課題に応えるUR8 Longは、単なる「新モデル」ではなく、検査工程の自動化を次のステージに押し上げる一手 と言えるでしょう。
出典
Metrology News: Universal Robots Expands Cobot Lineup With Long-Reach UR8 for Flexible Multi-Point Inspection
コメント